コミュニケーターが創る“想いで喫茶”~想いを引き出し穏やかな時間を~
2025.12.19

こんにちは!チームここはじの平塚陸です💨
気がつけば季節もすっかり移り変わり、温かい飲み物が恋しくなる頃になりましたね。
僕はよく「長野に比べたら寒くないでしょ~」と言われるのですが、「冬はやっぱりどこに居ても寒いですよ!」と言いたい!
ただ、湘南に憧れて当院に来た身としては、どんな季節もこの街の空気は素敵です。
さて、本日はライフケア事業部のリハビリテーション課に所属する介護職のコミュニケーターが企画したイベント『想いで喫茶』についてご紹介します。
リハビリテーション課では毎年、夏から秋にかけて新入職のメンバーたちが中心となり、イベントを実施します。
イベント開催のきっかけや意図に関しては、過去の記事もぜひご覧ください。
今年度は、初めてコミュニケーターが企画に挑戦し、準備・運営を課内スタッフ全員で取り組みました。
当日の様子はもちろん、なぜ「想いで喫茶」にしたのか、経緯や意図。
取り組んだことによって見えてきたことをメインにご紹介していきます。
本記事では、
・コミュニケーターという職種が、患者さんにどんな価値を届けているのか
・回想法やプルースト効果を用いた、心に寄り添うケアの実践
・リハビリテーション課が取り組む、身体だけでなく心にも向き合う関わり
・多職種連携の中で見えてきた、理学療法士に求められる視点の広がり
・医療と介護の価値観を尊重し合い、学び続ける職場環境
がわかります👀✨
では、早速当日の様子から。

今回のコンセプトは『喫茶店』
普段は普通のリハビリテーション室ですが、喫茶店を思い出させる空間へ変わっていました。
聞こえてくる音楽は、『およげ!たいやきくん』
近づいてみると、レコードから流れていることに驚き‼
僕も実際にレコードに触れてみたのですが、針を置いた瞬間のあの“ちりちり”という音に魅了されてしまいました♪

その他、喫茶空間の中には昭和から平成にかけて使用されていた、その時代を思い出せる黒電話や花札なども置いてあり、みなさん思い出話に花を咲かせているのが印象的でした。

こちらは、黒電話を片手にパシャリ📸慣れたようにダイヤルを回されています。

また、昔の写真や切手を見ながら、あの頃の思い出をお話してくださる姿も・・・。

長い人生の中の一瞬の出来事かもしれませんが、皆さんがあの頃を思い出し、素敵な表情をされていたのがとても印象的でした。
読者の皆様に、お顔をお見せできないのが残念でたまりません。

ちなみに、喫茶店の中にはこんな写真も・・・。
これは、昔の湘南台周辺の航空写真なのだとか💡
地元の小学校の協力を得て、お借りしたものだとお聞きしました。
地域の皆様、いつもご協力ありがとうございます。

最後に、喫茶店という名ばかりではなく、喫茶メニューもしっかりありました。
コーヒーも飲む楽しみだけではなく、味やにおいも含めて空間づくりの一つなのだとか💡
僕もしっかりコーヒーをいただき、患者さんと同じ思いを馳せてみました。
…違いますよ。さぼりじゃないですよ。取材、取材(笑)
続いて、企画したコミュニケーターの久保田さんへお話を聞きました🎤

Q:今年度のイベントを『想いで喫茶』にした経緯を教えてください。
久保田:
企画当初は「夏だし楽しいものを!」と思って、単純に『夏祭り』を考えていました。
しかし、内容を詰めていくにあたり、
「患者さんに何を感じてもらいたいのだろう」
「イベントを経て何がしたいのだろう」…
と目的を考えたときに、コミュニケーターとしてやりたいことは楽しい『夏祭り』じゃないと思ったんです。
そこからは「味わってほしい気持ちや、退院後まで心に残ってほしいこと」を基に、どんな形がよいかを模索しました。
その結果、一番近い形に出来ると考えた『想いで喫茶』になりました。
Q:「味わってほしい気持ちや、退院後まで心に残ってほしいこと」を具体的に教えてください。
久保田:
当院に入院される方の多くは、介護が必要なご高齢の方です。
コミュニケーターとして日々患者さんと関わる中で、「申し訳ない」「早くあの世へ行きたい」といった言葉を耳にすることも少なくありません。
歳を重ね、病気が増え、これまで出来ていたことが出来なくなっていく自分自身に、憂いを感じながら過ごしている方がとても多いと感じています。
だからこそ、“ちょっとほっとできる時間”や、“まあいっか”と思える瞬間を感じてほしいと思いました。
その時間を思い出として持ち帰り、退院後の生活の中で、ふと心が軽くなるきっかけになればいいな、そんな思いでした。
患者さんに感じてほしかったのは、『安堵』と『肯定感』でした。
平塚:
すごくよく分かります。「ごめんなさいね」とか「迷惑をおかけします」「お世話をおかけします」とか…
どんなに「大丈夫ですよ」「お気になさらないでください」って伝えても、表情は晴れないんですよね。
心の底にずっとあるお気持ちなんだろうなと思ってました。奥深いですね。
Q:なぜ「喫茶」にしたのでしょうか?
久保田:
まず、落ち着いてお話ができる空間をつくりたいと思いました。
そして、音や香り、写真などをきっかけに、昔の出来事やそのときの感情を自然と思い出せる時間をつくりたいと考えました。
その二つが一番叶えられる形が、「喫茶店」だったんです。
「想いで」と名付けたのは、患者さんの想いを引き出したいという気持ちと、その方の人生の思い出を一緒に味わいたい、そんな思いを込めました。
平塚:
おぉ、なるほど。
それって、事前に少し聞いていた「回想法」や「プルースト効果」ってやつなんですか?
ちゃんと理解できていないので、ぜひ詳しく教えてください。
久保田:
正直に言うと、私自身もコミュニケーターとして入職してから学んだので、実は覚えたてです(笑)
回想法というのは、写真や音楽、香りなどをきっかけに、過去の思い出を振り返りながら会話をする関わり方のことです。
昔のことを思い出すことで、認知症を併存する方でも表情がやわらいだり、会話が自然と広がったりする効果が期待できます。
プルースト効果も似ていて、香りや味、音などの感覚をきっかけに、そのときの記憶や感情がふっとよみがえる現象のことを指します。
懐かしさや安心感を呼び起こし、気持ちを穏やかにする効果が期待されています。
今回の『想いで喫茶』では、こうした考え方から、懐かしい空間や香り、写真を通して、その方の人生にそっと寄り添える時間をつくることを目的としました。
なので、コーヒーの香りや味も、とても大切にしました。
Q:想いで喫茶を終えた今、思うことは?

久保田:
イベント自体は、患者さんにも喜んでいただけたし、いい時間を作ることが出来たのではないかと思っています。
しかし、患者さんが生きてきた人生に寄り添う難しさや、一緒に寄り添う仲間の大切さを感じたイベントとなりました。
人生は本当にさまざまで、ひとり一人に寄り添い、その想いを引き出すためには、まだまだ知らないことが多いと実感しました。正直、自分の引き出しの少なさを痛感し、学び続けなければいけないと感じています。
また、現在コミュニケーターが1名という中で、理学療法士と一緒に準備・運営を行い、「医療」と「介護」の狭間で多くの意見交換をすることができました。目指す方向は同じでも、物事の捉え方や優先する視点が異なる場面も少なくなかったと感じています。
それでも、その違いを「壁」ではなく「対話のきっかけ」と捉え、より良い関わりを模索していくことが大切だと、今は思っています。。
今回の取り組みをしっかり振り返りながら、高齢者の生活を支えるために、医療と介護がどう手を取り合えるのか。その答えを、これからもチームで考え、作り続けていきたいです。
以上、リハビリテーション課から『想いで喫茶』についてのご紹介でした。
コミュニケーターが発足して、1年。まだ1年⁉もう1年⁉というほど、コミュニケーターとの関りは、ここはじとしても濃い時間でした。
誕生から関わり、ワクワクドキドキしていたあの頃を思うと、着実に歩んできた1年間があったのだと感じます。
今では、いつも患者さん、ご家族、ご施設の隣で真剣に話を聞くコミュニケーターの姿を見て、「湘南で一番、高齢者にやさしい病院」を目指す当院らしい姿の一つだと感じるようになりました。
これからのコミュニケーターの活躍も要チェックや!!
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